シンガポールに住んでいる間に株式投資を始めてみたい!
と思うシンガポール在住の方は多いのではないでしょうか。
シンガポールは個人についてはキャピタルゲイン課税がなく配当課税もない夢のような国です。
仮に株で1憶円儲けたとした場合、日本では2,000万円の税金を払わざるを得ませんが、シンガポールでは非課税です。
結果として、日本で1憶円儲けた場合に手元に残るのは8,000万円、これに対しシンガポールでは1憶円まるまる残ります。
これは大きな差です。
運良くシンガポールで駐在や現地採用で働いている、あるいは帯同して住んでいる方は、ぜひこのようなメリットを活かしましょう!
私もシンガポール駐在中に大儲けを目指して現地で株式投資をやりました。
ということで、今回はシンガポールでの株式投資経験9年の私がシンガポールで投資をする方法について紹介します。
- 対象:シンガポール居住者(EP等ビザを持っている人)で投資初心者の方
- 得られること:シンガポールで株式投資(上場株・リート)投資を始める方法
シンガポールで株式投資をする方法
シンガポールで株式投資ができる金融機関
シンガポールに住んでいればシンガポールの銀行口座は持っていると思います。
おそらくシンガポールローカル銀行のDBS、OCBC、UOBのどれかの銀行口座を持ってますよね?
でも、残念ながらDBS, OCBC, UOB単体では株式投資はできません。
銀行口座とは別に証券口座を開く必要があります。
シンガポールで株式投資ができる代表的な金融機関は
- 証券会社:DBS Vickers, OCBC Securities, UOB Kay Hian, Maybank Kim Engといった銀行系列の証券会社
- 証券取引ができる銀行:Standard Chartered Bank Singapore
です。
このうち私はOCBC SecuritiesとStandard Chartered Bank Singaporeを使っています。
以後銀行系証券会社としてOCBC Securities、銀行としてStandard Chartered Bank Singaporeの例で説明します。
OCBC Securitiesでの株式投資
銀行系証券会社であるOCBC Securitiesでの株式取引について説明します。
OCBC Securitiesの口座開設
OCBC Bankに口座を持っていても、OCBC Securitiesには別に口座開設が必要です。
私はChurch Streetの本店で口座を開きました(どこで口座を開いてもOKです)。
以下のように証券口座とCDPの口座を開き、OCBC Bankと証券口座を連携させます。
- OCBC Securitiesで口座開設。なお、シンガポールでの株式の保管はCDPを使うことにしましょう。
- OCBC BankとOCBC SecuritiesをGIROで連携。
OCBC BankとOCBC SecuritiesをGIROで連携させておけば、OOCBC Securitiesで株を買った代金はOCBC Bankの口座から自動的に引き落とされます。
この場合シンガポール株を買う前にOCBC Securitiesに資金を移動する必要はないですが、あとで引き落とし可能な金額で取引してくださいね。
また、シンガポールでの配当金の受け取りですが、証券口座を開設するときに保有株式をOCBC Securitiesでの預かり(Custody)ではなく「CDPでの預かり」としておけば、自分が指定した銀行口座に自動的に振り込まれます。
CDP預かりの場合自分の資産は証券会社とは別に管理されているので、仮にOCBC Securitiesが潰れた場合でも自分の資産は安全に保全されています。
OCBC Securitiesで預かる形にすると、配当金は自動振り込みではなく小切手で送られてくるはずです。
私は以前OCBC Securitiesで米国株を取引きしたことがありOCBC Securities預かりだったのですが、シンガポールの自宅に配当金の小切手が送られてきました。
小切手でも良いのですが、換金の手間がかかるのでめんどくさいです。
また、日本に帰国した後シンガポールドルの小切手をもらっても換金手段がないので、すなおにCDP預かりにしておきましょう。
なお、配当金の振込口座には必ずしもOCBC Bankを指定する必要はありません。
最初の頃は少しごっちゃになるかもしれませんが、シンガポールでも証券会社の口座とCDP(日本でいう「ほふり」)の口座は全く別の設定になります。
ちなみに、私の場合、配当金受け取り口座はOCBC Bank以外の口座を設定しています。
OCBC Securitiesで買える株
OCBC Securitiesではシンガポール以外の市場への投資も可能です。
取引可能な市場は以下のように極めて広範囲な市場に投資することができます,。
- シンガポール
- オーストラリア
- 香港
- インドネシア
- マレーシア
- 韓国
- 日本
- ニュージーランド
- フィリピン
- 上海
- 深圳
- 台湾
- タイ
- カナダ
- アメリカ
- フィンランド
- フランス
- ドイツ
- ギリシャ
- アイルランド
- オランダ
- ノルウェイ
- ポルトガル
- スペイン
- スウェーデン
- スイス
- イギリス
ただ、実際のところそんなに広範囲の国の個別株に自分で投資する必要は全くなく、広範囲に投資したいのであればETFでカバーできます。
取引可能な市場が多いというのは、実質的にはあまり意味はありません。
ただ、どうしてもそういった個別市場に投資したい銘柄があるんだ!という場合は、OCBC Securitiesはファーストチョイスになります。
OCBC Securitiesのメリットと注意点
OCBC Securitiesで取引するメリットは、株式投資のための資金移動が楽なことです。
GIROで株の買い付け時にはOCBC Bankから自動で引き落とされ、売却時には売却代金が自動でOCBC Bankに振り込まれます。
株を買うためにいちいち銀行振込や振替で資金を移動させないといけないとなるとめんどうですよね。
ただ、株を買ったらOCBC Bankの口座から問答無用で引き落とされてしまうので、OCBC Bankの預金残高はきちんと維持する必要があります。
OCBC Securitiesの売買手数料
OCBC Securitiesでシンガポール証券取引所上場のリートや株を一回 SGD 50,000以下のオンライン取引をする場合には、以下の手数料とコストがかかります。
- OCBC Securitiesでの売買手数料: 0.275%(最低手数料 SGD 25)
- SGXのクリアリングフィー: 0.0325%
- SGXのトレーディングアクセスフィー: 0.0075%
- 売買手数料+クリアリングフィー+トレーディングアクセスフィーに対して7%のGST
- SGXの精算指示フィー: $0.35/件(売却時)
実際に私がSingtelをSGD 5,760で購入したときの手数料は以下のようにSGD 29.22もかかりました。
日本の証券会社で国内株式を現物売買する場合に比べ、シンガポールの証券会社の手数料って高いんですよね。
例えば、楽天証券で50万円以下の国内株式を売買したときの税込手数料は270円です。
上記のSingtelの税込手数料は約2,400ですから、シンガポールでの売買手数料はメチャクチャ高いことがわかります。
シンガポールは売買手数料が高いので、私は基本的にはリートや株を買って長期的に保有する形にしています。
Standard Chartered Bankでの株式投資
Standard Chartered Bankの口座開設
Standard Chartered Bankでは銀行口座とは別にBrokerage Account(証券口座)も開くことができます。
銀行口座を申し込む時に「Brokerage Accountも申し込みたい」と伝えましょう。
「どの通貨のBrokerage Accountを作りたいのか?」
と聞かれるので、シンガポールのリート・株式投資をしたい人は
「SGDとUSDのBrokerage Accountを作りたい」と答えましょう。
OCBC Securitiesでの株式投資の場合は事前にOCBC Securitiesに資金がなくても買い注文はだせるのですが、銀行の場合は違います。
Standard Chartered Bankの場合は、銀行口座にある資金の枠内でしか買い注文が出せません。
買い注文を出す前に買い注文を出す通貨の口座に資金を移動させておきましょう。
例えば、香港上場株を買う場合は、為替取引で香港ドルに換えておきす。
また、Standard Chartered Bankで株式投資をするときは、CDPは使いません。
株式はStandard Chartered Bankに預ける形です。
これは仕組みの問題なので、Standard Chartered BankでCDPを使うことはできないというのが正確な言い方ですね。
Standard Chartered Bankの場合はCDPを使っていないので、銀行が倒産した場合は自分の資産も毀損するリスクはあります。
もっとも、シンガポールで規制されている銀行がいきなり消滅して自分の資産がなくなるという事態は極めて考えにくいので私は気にしていません。
理論上はリスクは存在する程度の話です。
Standard Chartered Bankで買える株
Standard Chartered Bankでもシンガポール株以外の海外市場へも投資ができます。
投資可能な市場は以下となっています。
- 米国
- スイス
- イギリス
- オランダ
- ドイツ
- フランス
- 日本
- 香港
- シンガポール
- オーストラリア
シンガポールという東南アジアのハブにいながらほかの東南アジア市場に投資できないのはどうかとも思いますが、一般的には米国、香港、日本、シンガポールの4つをカバーできていれば十分にポートフォリオを組むことは可能です。
マレーシア、タイ、インドネシアあたりの株をどうしても買いたい!っていう方にはStandard Chartered Bankは向かないので、OCBC Securitiesを使いましょう。
なお、米国株取引をする際にはForm W-8BENという書類を定期的に提出する必要があります。
これがないと、米国株の売却代金から源泉課税されてしまうという大変なことになりますのでお忘れなく。
Standard Chartered Bankの手数料
Standard Chartered Bankの手数料は通常の場合取引額の0.20%で、最低手数料はありません。
ただ、SGX関連の費用やGSTはかかります。
- Standard Chartered Bankでの売買手数料: 0.20%(最低手数料 無し)
- SGXのクリアリングフィー: 0.0325%
- SGXのトレーディングアクセスフィー: 0.0075%
- 売買手数料+クリアリングフィー+トレーディングアクセスフィーに対して7%のGST
- SGXの精算指示フィー: $0.35/件(売却時)
Standard Chartered Bankの場合、Priority Bankingという口座のステータスになれば売買手数料は 0.18%に下がります。
実際に私がFrasers Logistics & Industrial TrustをSGD 5,936で購入したときの手数料は以下のようにSGD 13.98でした。
通常の手数料は0.2%ですが、私はPriority Bankingなので0.18%が適用されています。
- Standard Chartered Bankは最低手数料なし、OCBC SecuritiesはSGD 25
- Standard Chartered Bankha売買手数料0.2%、OCBC Securitiesは0.275%
- その他のSGX関連費用やGSTは同じ
売買手数料の手数料の安さを求めるならStandard Chartered Bankで株式投資をするのがおすすめです。
配当金の受け取り方法
シンガポールでの株式投資といえば配当金が楽しみですよね♪
OCBC SecuritiesでCDPを使って取引をしている場合、配当金はCDPで設定した銀行に自動的に振り込まれます。
小切手を受け取るようなめんどうなことはないので安心してください。
Standard Chartered Bankで取引している場合も、配当金はStandard Chartered Bankの自分の口座に自動的に振り込まれます。
ただ、Standard Chartered Bankで株を保有している場合の配当金の受け取りは、CDP経由で受け取り場合に比べて1-2日受け取りに時間がかかります。
おそらくですが、Standard Chartered Bankに配当金が一度まとめて振り込まれて、それを各口座にシステムで自動的に振り分けるのに時間がかかっているのではないでしょうか。
OCBC SecuritiesとStandard Chartered Bankでの取引のメリットデメリット
OCBC Securities, Standard Chartered Bank両方とも使っている観点からそれぞれのメリット、デメリットを考えてみました。
OCBC Securitiesのメリット
- CDPで資産の分別管理がされているのは安心
- 投資先の会社が発表しているPayout Dateにちゃんと配当金を受け取れる
- 買い注文時に資金が無くても買い注文は出せる
OCBC Securitiesのデメリット
- 銀行と証券会社の二つ口座を開いて管理しないといけないのが面倒くさい。
シンガポール在住の時はそうでもないですが、日本に戻ってきてシンガポールの口座を複数管理しないといけないのはかなりめんどくさいです。 - Standard Chartered Bankに比べ売買手数料が高い
Standard Chartered Bankのメリット
- 銀行と証券をまとめて一つの口座で管理できる。住所変更などの手続きも一カ所やればよい
- Standard Chartered BankのほうがOCBC Securitiesに比べて取引手数料が安い
Standard Chartered Bankのデメリット
- 株式取引をする前に事前に資金を用意しないといけないので、買いのチャンスを逃すこともある
- 配当金受け取りのタイミングが少し遅い
- Standard Chartered Bankがつぶれた場合に、資産が保全されるかどうかリスクはある
日本に帰国するときにシンガポールの銀行、証券口座は解約しないといけないのか
シンガポール居住時に開いた銀行や証券口座は、日本に帰国することになっても維持することができます。
私はシンガポールから日本に戻って三年以上経ちますが、シンガポールに残した銀行・証券口座は問題なく使えています。
シンガポールでの銀行口座を開くときには居住者である必要はありますが、シンガポール非居住者になったとしても全く問題なく使えます。
日本居住者でもシンガポールの銀行口座から銀行振り込みもできますし、シンガポールの証券口座での株式投資も全く問題なくできます。
よって、日本に帰国するときにシンガポールの銀行・証券口座は解約する必要はありません。
シンガポール非居住者になってからシンガポールの銀行口座を新しく開設するのはほぼ不可能なので、本帰国時に口座を閉じるのは慎重に判断したほうがいいですね。
シンガポール株式投資でやらなかった方が良かったこと
私は昔シンガポールに住んでいていまは日本に戻ってきています。
振り返ると、シンガポールでの株式投資をする際にこういうことをやらないほうが良かったなあと思うことがあるので紹介します。
保有銘柄をもっと絞っておけばよかった
私は現在シンガポールリート、株、ETFで26銘柄保有していますが、多すぎです。
全く管理できません。
全ての銘柄が四半期配当ではないのですが、7割位は四半期配当の銘柄です。
このため四半期ごとに20銘柄位の配当が振り込まれてくるわけですが、集計しきれません。
自分でもわけがわからないことに同じ銘柄をOCBC Securities, Standard Chartered Bank両方で保有しているケースもあり、これも配当金の集計作業に時間がかかる原因です。
シンガポール居住時には税金がかからなかったのでよかったのですが、日本だと確定申告をする必要がありますよね。
26銘柄の1年間の配当履歴を全て確認して税金の計算をするのがとてもめんどくさいので、保有銘柄をもっと絞っておけばよかったなあと思います。
株式投資は日本帰国時に一社に集約すべきだった
いま私はOCBC Securities, Standard Chartered Bankの二つの口座で資産を保有しているのですが、正直なところ二つの口座を使う意味はないです。
ただ、口座の管理が面倒くさいだけです。
資産金額を把握するだけでもいちいち二つにログインしないといけないのでとても面倒です。
OCBC SecuritiesとStandard Chartered Bankどちらでもいいのですが、日本に帰国する前にどちらか一方に口座を集約しておけばよかったです。
今からシンガポールで株式投資をするならどんな銘柄を選ぶか
これまでの9年間のシンガポールでの株式投資の経験を踏まえて、今から始めるならどんな銘柄を選ぶか考えてみました。
せっかくシンガポールで株式投資ができる環境にあるのであれば、シンガポールリート投資に挑戦してほしいです。
私は8年にシンガポールリートに投資しいまでは資産の過半がシンガポールリートになっていますが、非常に安定した配当金を得られます。
シンガポールリートのおすすめポイントについては以下で紹介しています。
シンガポール株もやってみたのですが、銘柄の選択肢が少なく正直微妙です。
株式投資だったらあえてシンガポールの会社に投資するメリットはあまりないでしょう。
銘柄選択の方法ですが、今の私だったらシンガポールリートの時価総額上位10銘柄に均等で時間分散で投資しますね。
具体的には、シンガポールドル資産を10等分くらいにして、シンガポールリート時価総額上位5銘柄を毎月一銘柄づつ5ヵ月に分けて投資し、それを二周します。
そして、シンガポールリートからの配当や給与などで追加のシンガポールドルを得たら、それぞれの銘柄の比重が一定になるような方向で四半期に一度追加投資をしていきます。
銘柄数を絞ることで
- 管理がしやすい
- 日本での確定申告の計算が容易
というメリットがあります。
保有銘柄を少数に絞ることはリスクもあるのですが、時価総額上位の銘柄であればそんな変なことはしないと思います。
時価総額上位銘柄については以下のランキング記事を参考にしてみてください。
また、以下の記事ではシンガポールリートを使って月収30万円の不労所得を得る方法も紹介しています。
こちらもご参考に。
シンガポールで投資を始めるために日本から海外送金をする方法
最後に、シンガポールで投資を始めるための初期資金を日本から海外送金する方法について書きます。
私が昔使った方法は以下です。
- 昔のシティバンク日本(今のプレスティア)から日本円のままシティバンクシンガポールの円口座に海外送金をする。
日本からシンガポールドルで海外送金することはめんどうくさいので、日本円あるいは米ドルでシンガポールに送金した上で、シンガポールの銀行でシンガポールドルに換えるのが基本的な方法になります。
ただ、プレスティアに米ドル資金がないのであれば、あえて米ドルに変えて海外送金をするのではなく日本円のままシンガポールに海外送金してしまうのが一番送金コストが低くていいと思います。
プレスティアゴールドのステータスであれば海外送金手数料は無料ですので、プレスティアゴールドで日本円のままシティバンクシンガポールなどシンガポール銀行の円口座に入金しましょう。
そして、日本円からシンガポールドルへの為替取引をして、シンガポール投資の資金を準備します。
まとめ
シンガポールで投資をする方法について説明しました。
シンガポール株やリートによる安定的な配当収入があることで、日本帰国後もかなり楽に生活できるようになります。
シンガポールの銀行や証券口座を容易に開設できることは、シンガポール居住者の大きなメリットだです。
株価が下落し資産が減るリスクはありますが、シンガポールに住んでいるうちに株式投資に挑戦してみてはいかがでしょうか。
実際の取引は、日本での証券取引同様非常に簡単なので誰でも始められます。
なお、
- 株式投資なので損することもあること
- 日本帰国後は確定申告をしないといけないこと
には注意してください。